31日にNPBと日本プロ野球選手会が制度案について大筋で合意し、今年行われることが有力な現役ドラフト。本日は現役ドラフトの現時点で分かっている内容や指摘されているデメリットなどについて紹介したいと思います。
概要
現役ドラフト(仮称 ブレークスルードラフト)は日本プロ野球選手会が出場機会の少ない中堅選手の移籍活発化のために導入を希望しているものです。現時点では球団側が2人以上の選手をリストアップすること、各球団が最低1人以上を指名することなどが見込まれています。
戦力外通告が終わり、保留者名簿の公示が行われた後の12月上旬に行われる見通しです。選手に配慮して非公開で行われ、選手リストも公開されない予定です。テレビで大々的に中継される通常のドラフト会議とは大きな違いがありますね。
また、事前選挙システムというものの導入も検討されています。これは各球団が現役ドラフトを実施する前に12球団の対象選手リストの中から獲得したい選手に投票し、得票数の多かった球団から順に指名する権利を得るというものです。
つまり、より魅力的な選手、他球団から獲得したいと思われるような選手をリストに入れることによって、より高い指名優先度を得ることができるということです。これは例年行われる通常のドラフト会議のくじ引きにあるような運要素を廃したものとなっています。
また、これまでに外国人の選手や前年のドラフトで指名された新人選手、育成選手、一定の高額年俸の選手は対象外となるなどの予想もありましたが、詳しい条件は明らかにされておらず、今後協議を重ねて詳細を決定していくと思われます。
元となったMLBのルールファイブドラフトとは?
この現役ドラフトはもともと日本プロ野球選手会がMLBで実施されているルールファイブドラフトを参考にして導入を求めたものです。ルールファイブドラフトとは、有望な選手が活躍する機会を与えられないことを防ぐための制度で、マイナーリーグの選手を対象として毎年12月に行われています。
契約した時点で18歳以下の選手は5シーズン以内にメジャー契約されなければ対象となり、契約した時点で19歳以上の選手は4シーズン以内にメジャー契約されなければ対象となります。
メジャーの40人枠(支配下登録枠)に空きがあるチームのみ参加可能で、その年の優先権のあるリーグのレギュラーシーズンでの勝率が低いチームから指名権が与えられます。指名したチームは選手が所属していたチームに10万ドルを支払うことで選手を獲得でき、指名した選手は翌シーズンの全期間にMLBの26人枠(試合に出場可能な選手登録枠)に登録し続けなければなりません。
現役ドラフトで指摘されている問題点
ここまで見てきた日本の現役ドラフトとMLBのルールファイブドラフトとの決定的な違いは、球団側がリストに入れた選手が対象となるか、条件を満たした多くの選手が自動的に対象となるかでしょう。
球団側が選手を選ぶことができる以上、有望な選手はリストアップされない可能性があり、日本の現役ドラフトは第二の戦力外通告になるのでは?という指摘もあります。
このことに関しては2021年に里崎智也さんが「プロテクトを40人くらいと決める。その中に2年目の選手やFAを持っている選手などは入れなくていいなどの細かいルールを決めて、1チーム20人くらいの選手がリストアップされないようでは、活性化にならない。今年(当時2021年)トレードされた国吉選手(横浜DeNA→千葉ロッテ)であったり、加藤選手(中日→千葉ロッテ)であったり、炭谷選手(読売→東北楽天)のようにトレード候補にあがる選手がそのリストに入っていないと活性化されない」とコメントしています。
実際、日本プロ野球選手会は当初、入団年数ごとに1軍登録日数の下限を設け、登録日数に満たない選手をすべて対象にすることを求めていましたが、協議の結果現在の形が大筋で決定されました。このことに対して当時選手会長だった炭谷選手は「最初求めていたよりは、ずれるかもしれない」とコメントしていました。
また、当初は8人を選定しリストに入れることが想定されていましたが、現在は最低2人と大幅に人数の規定が減少しています。現役ドラフトで指名された選手が翌年の現役ドラフトでまたリストに入れられるという「たらい回し」のような状態にならないかとの指摘もあります。このようなことを避けるため、現役ドラフトで指名した選手は何年間かはリストに登録することはできないといった規定も必要なのではないでしょうか。
現役ドラフトは最低1人選手を指名しなくてはならないという決まりがあるためルールファイブドラフトのように出場選手登録の規定を作ることは難しいかもしれませんが、移籍先のチームで選手がチャンスを与えられるような仕組みも何かしら設けるとよいと思います。
曾澤選手会長は26日のオンライン会見で、「全体的に見れば、野球だけが人気スポーツじゃない。野球を子どもたちに選んでいただけるように、魅力あるプロ野球ということで、こういう制度を話していきたい」と語っていました。
現役ドラフトが当初目的とされてきた通りに活躍の機会の少ない選手に光が当てられるきっかけとなり、プロ野球がより活性化されることを期待したいです。「第二の戦力外通告」と呼ばれ、制度が形骸化することのないよう、今後の協議で条件を固めていって欲しいです。
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